日時 2013年6月22日(土) 10:00〜14:00
場所 有明海(佐賀県鹿島市
天気 曇りのち晴れ
風  少し
波  なし、水なし
船  潟スキー
ターゲット ムツゴロウ
参加者 チョコU、塾長、エギン
結果
 チョコU:3匹、塾長:3匹、エギン2匹

ひょんなことから、チョコU、塾長、エギンの3人で、有明海にムツゴロウを
釣りに行くことになった。

なに?ムツゴロウ
ムツゴロウってあの泥の中におるハゼみたいなやつでしょ。
一本竿で引っ掛けるんじゃなかったっけ。
昔、釣りキチ三平で読んだ記憶がある。

普通の人の知識はこんなもんだろうきっと。
別にこれが悪いと言っているわけではない。

実際に佐賀に来てわかったんだが、地元、佐賀県でも
ムツゴロウを食べたことすら無い人ばかりなのだ。
ましてや、釣ったことのある人なんて、そうそう居るもんじゃない。

茱崎(2週間前)道中の車内
「ムツ掛け体験?面白いかも知れんなあ」@エギン
「でーらーやりたかったんだってー」@塾長
「確かに、釣ったことあるやつは、なかなか居らんと思うなあ」@エギン
「エギンさん、ムツゴロウなんて簡単に釣れると思っとるでしょう」@塾長
「なにー、あれ難しいの?」@エギン
「エギンは、なーんもわかっとらんわ」@塾長
「ど、ど、ど、ど、どーゆーこと」@エギン
「xxxxxxx」@一生懸命解説する塾長
「俺もやってみたいなあ」@みんちょる

いまでこそ、簡単に解説すると
キャスティングやフッキング以前の問題で、ムツゴロウは
釣り人が近づくと、気配を感じ、すぐに泥の中に隠れてしまうのだ。
だから、結局ほとんどのひとが、ボーズをくらうらしい。
俺は釣り名人だ、みたいな人も、相当やらかして帰るらしい。
しかも、産卵前の6月は、ムツゴロウが神経質になっておって
さらに難しいらしい。

釣ったムツゴロウの数が何匹というよりも
釣れたか、釣れなかったか、ここに大きなボーダーラインがあるようだ。

もちろん、我らが地元愛知では、ムツ掛けの練習など、出来るはずもなく
自分がこれまで身に付けてきた「釣りの技術とセンス」だけを頼りに
現地での一発勝負に掛けるのみだった。

道の駅 鹿島 に到着。



受付をすませて、着替え。
各自、足袋とニーパッドを付ける。

最初の1時間くらい、参加者が岸でペットボトル相手にキャスティング練習、
そのあと、師匠によるムツ掛け実演
で最後に、参加者が実際にムツ掛け実釣(実質3時間くらいだったと思う)

師匠が練習用道具の準備。



5mくらいのまーまー固い一本竿で、竿尻に少し曲がった竹を接続してある。
ラインはおそらくPE2号くらい。
その先にゴルフボールがついている。
道糸の長さは竿より50pくらい短い。

グリップエンドを腰にあてて、右利きの人は右手でゴルフボールを持って
さーっと前方に送り出す。
その送り出したゴルフボールが、ペットボトルに向かって一直線に進み
最長不倒の位置でペットボトルに当たればOK。
「100発100中でペットボトルに当てれないと、
 ムツゴロウは掛けれませんよ」@師匠

最初は立ってキャスティング、次に膝をついてキャスティング。

↓左利きのチョコUさん、右手で竿を持って左手でゴルフボールを送り出す。



こちらは右利きの塾長



練習風景



限られた時間の中で、学習能力全開でキャスティング技術を磨く3人。
今回の参加者は我々3人に加え、もう一人居た。
そのもう一人の人は、今回が3回目らしい。
ちょっと意味は違うが、以後『乗り合いの人』ということにさせてもらう。

「こんなに、ぱっかんぱっかんペットボトル倒す人たち
 居ないっすよ」@乗り合いの人
「何回目なんですか?」@乗り合いの人
「3人とも初めてです」@エギン
「普段釣りされてるんですか?」@乗り合いの人
「相当な釣りキチだと思ってください」@エギン
「どちらから来られたんですか?」@乗り合いの人
「名古屋です」@エギン
「このために、名古屋から来たんですか?」@乗り合いの人
「そうです、ムツゴロウ釣りたくて来ました」@エギン

もくもくと練習する3人。
後半は、ペットボトルのわずかに奥に入れて引いて倒す練習をしていた。

「あんたらー釣るかも知れんなあ」@師匠
何かを感じた師匠がつぶやいた。

掛け針の針先を、入念に研いでいた師匠から、開始の合図。
「そろそろ始めますよ」@師匠
「ガツガツ追い掛け回すと、ムツゴロウが必ず逃げますから
 落ち着いてゆっくりした気持ちでやって下さい」@師匠
「まずは私が見本を見せますから見てて下さい」@師匠

師匠様のお手本


動画をみると案外あっさり掛けているが、これが難しい。
いざ出船。
「潟スキーの後ろの方に乗ると進みやすいですよ」@乗り合いの人
確かに言われた通りに後ろに乗ると進みやすい。
ずっとやってると、スキーの上に泥が乗ったり、
移動しないと、スキーそのものが沈んでしまったりで、
なるべく水のある所を、ちょっとづつゆっくり進むのがいいんじゃないかなあと思う。

ムツゴロウを追いかけてスキーを漕ぐのだが、どいつも、こいつも、
みんな殺気を感じて泥の中に潜る。
キャストしたくてもできない。
「さっきの師匠はあっさり掛けたけど、ほんとに釣れるんかい」@エギン
移動しても射程距離に入る前に、全部泥の中に潜る。
かといって、待っていても、泥の中から出てこない。
どうしたらいいんだろう。近寄り方がまずいのか。エリアがまずいのか。

どうしたらいいかわからんまま、一投もキャストできない時間が過ぎる。

すると、チョコUさんの大声。
「やったー釣った!」@チョコU



「でらー嬉しい」@チョコU
このとき岸のギャラリーから拍手。
本人は気づかなかったらしいが。



やるなー、チョコUさん。
釣ったこと以上に、キャストできていることに、大幅なビハインドを
感じたエギン。
あかんこれは。



すると今度は塾長
「おっしゲット」@塾長
チョコUさんに続き、塾長もゲット



あっかん、これ。
このまま釣れんかったら、名古屋に帰ってからえらい目にあう。
無意識に潟スキーを漕ぐペースが上がる。
しかし、ムツゴロウは逃げるばかり。

するとまたチョコUさんの叫び
「おっしゃー2匹目」@チョコU

ここでエギンは身の危険を感じた。

息苦しい。

蒸し暑い干潟、シンドイ潟スキー漕ぎ、自分だけ釣れていないプレッシャー
これら全てが重なって息苦しくなってきた。
たぶん熱中症気味だったんだと思う。

ここで助けを求めても、ドロドロの干潟、すぐに助けにきてもらえない。
安全のため、岸際を攻めることにした、あと、ゆっくり動くことにした。

幸いこの時間帯から、ちょっと晴れてきて、爽やかな風が吹き始めた。
息苦しさも収まってきた。
逃げられてばかりだったムツゴロウとの距離が、次第に短くなってきた。

ターゲットを絞る、気配を殺して近寄る、
射程距離に入る、竿を構える、掛け針を持つ、
さあ投入!
しかし投入直前であっさり泥に潜るムツゴロウ。

やっぱり、奴ら、相当手ごわい。

こうなったら、なるべくバカそうなムツゴロウを探すしかない。

↑ウソです。

たぶんムツゴロウはみんな賢い。

みんなが攻めていない、岸際のエリアへ移動。

残り1時間くらい。
これまでキャストできたのはおそらく10回未満。
未だボーズ。
一回掛かったがばれてしまった。
このまま終わるわけにはいかん。

もしこのまま俺だけ釣れんかったら、相当長いこと
「エギンは総合的に釣りが下手だ!」
と言われるに決まっておる。
なんだか知らんけど、いつもの展開になってきた。

求愛行動をしているムツゴロウは潜りやすいので無視。
ぼけーっとしてそうなムツゴロウ、背中を向けているムツゴロウに
的を絞り接近。

そっと竿を構える。
ムツゴロウの20p奥目がけて掛け針をキャスト、
着底したら一気にフッキング
戻ってきた掛け針に、ムツゴロウがしっかり掛かっていた。

「やったー釣れた!」@エギン



「良かった〜釣れて」
精神的に楽になった。
その後、何度かキャストできるようになって、一匹追加。



「そろそろ終わりますよ〜」@師匠

港へ集合。
みんなの笑い声が聞こえる。

ほんと良かった〜、釣れて〜と思いながら戻る

「エギン、ボースか?」@失礼な塾長
「釣ったって、ちゃんと、2匹!」@エギン



めでたく3人共ゲット。
チョコU:3匹、塾長:3匹、エギン2匹
乗り合いの人は2匹。

でこれが師匠様の結果、約300匹。



ド素人対師匠 ならまだしも
釣りキチ(我々)対師匠 で100倍の差が出る釣りも少ないと思う。

「3人とも、釣った?」@師匠
「3人とも、ちゃんと釣りましたよ」@塾長
「3人で来て、3人とも釣ったんは、初めてだわ」@師匠
「そうなんですか?」@パル
「10人くらいで来て、10人ともボーズなんざーよくあること」@師匠
「最初の練習のときから見とったけど、あんたらーは
 一生懸命さが違ったからなー、気持ちが入っとった」@師匠
「どうしても釣りたかったもんで」@パル
「ゴルフボールもちょっと当たるようになると、すぐ練習止めちゃう人が
 ほとんどだけど、あんたらーは真剣に練習続けとったもんなあ」@師匠

ただの体験として遊びに来るのか、
ムツゴロウを釣りたくてしょうがなくて来るのかの
違いなのかも知れない。

その後、夜の部。
ここで、師匠に、いろいろ深い話を聞かせて頂いた。
・針先は指先、泥に針の跡を残さない
・ムツゴロウに近づくんじゃなくて、ムツゴロウから近づいてくる
・普通のムツ掛け師は、技術を教えない、それでは後継者が育たない
・200匹が二枚目の壁

3人の会話。
「確かに難しいけど、面白いねえ」
「視力、体力、釣りのセンス、ハンティングのセンス、
 いろんなもんが要求されるね」
「それにしても、あの師匠の数は凄いねえ」
「なんであんなに近寄れるのかなあ」
「気配の殺し方が上手いんやろなあ」
「俺なんかさあ、息苦しくなるし、みんな先に釣るし、
 でらー追い込まれたってー」@エギン
「ほんと、エギンは追い込まれてから力出すよなあ」@チョコU
「このまま結果が出んかったらどうなるかっちゅうのを考えると
 あかん、このままじゃーって思うんだわ」@エギン
「もし俺だけ釣れとらんかったら、今頃しょぼーんとして
 不味いビール飲むんだろうな」@エギン
「ほんと、3人とも釣れてよかったてー」@塾長、チョコU
「釣り人として、ほんと良い経験したわ」

「どうしても釣りたかったもんでさあ、俺なんかわざわざ
 釣りキチ三平のDVD借りてきて観たもん」@塾長
「ほんとー、ほいで物語の中では、三平くんは釣ったの?」@エギン
「釣れんかった」@塾長
「あそー」@エギン
「『ムツゴロウにまぐれはなかー』っちゅうことらしいわ」@塾長


帰宅後、ネットで釣りキチ三平ムツゴロウを検索してみた

釣りキチ三平 17巻 ムツゴロウ釣り編1



結局、ボクの有明海アタックは、1匹のムツゴロウもかけることなく終わった。
結果としては、これでよかったと思う。
1匹のムツゴロウもかけられなかったことが、
逆に伝統の神わざの価値感を増大させ、その奥義の深さを、
おどろきとしてストレートに作品に表現することとなった。
(「あとがき」より)

矢口さんの「あとがき」を読んでじーんと来た。
「伝統の神わざ」「奥義の深さ」
今日我々が目の当たりにしたこの神業を、
三平くんは何十年も前に目の当たりにしたのだろう。
そうなると、はっぱり、伝統漁法の後継に意味がある。

ムツ掛けはそんなに難しいんかい?
と思ったら、ぜひムツ掛け体験に参加してほしい。
通常は釣りやすい7月から開始しているはず。
交通費も掛かるし、気軽には行けないが、
釣り人として経験する価値のある釣りだと思う。
「やらかしたら後で笑われる」
やる前から、そんなことを言う根性なしとは会話もしたくないわ。

もし、本当に行くのなら、アユ釣り師が履くような
厚めのタイツを履いて釣りするのをお勧めします。



■13年8月追記

最近いろんなところで、ムツゴロウの話を聞かれる。

総じて言うと
「難しそうだけど、面白そう」
という感じで。

あと
「足大丈夫?」
まーいーやオレの足のことは。

我々くらいの歳になると、というか、釣り経験を重ねると、
カジキやGT、氷上のワカサギまで、大概の魚は釣ったことがあるという人が多い。
そんな中にあって、ムツゴロウを釣った人は少ない。

あの魚を釣りに、わざわざ九州までっちゅうのもあるのだが。
正直に言うと、釣行前
「ムツゴロウ釣ったことある奴はそうそう居らんだろうから
 釣ったら自慢できるだろうなあ」
と塾長と会話していた。

なんとかムツゴロウを釣ったものの、やはり気になって、
釣りキチ三平講談社コミックスペシャル版
17巻18巻(有明海のムツゴロウ編)を購入したみた。

僕がパルパロレポートに書いた(転記した)あとがきは以下の通り

結局、ボクの有明海アタックは、1匹のムツゴロウもかけることなく終わった。
結果としては、これでよかったと思う。
1匹のムツゴロウもかけられなかったことが、
逆に伝統の神わざの価値感を増大させ、その奥義の深さを、
おどろきとしてストレートに作品に表現することとなった。
(「あとがき」より)

17巻18巻を買ってみてわかったのだが、この「あとがき」というのは
「あとがき」の一部抜粋だった。
当たり前だが、あとがきの一部でなく全部を読んだ。

矢口高雄さんは
釣ったときの感触、喜び、興奮をストレートに伝えたく、
実際に自分で釣った魚を題材にしているらしい。

しかしながら、フィクションの魚を除いて、釣れなかった魚が2種類ある。
それがムツゴロウとアカメらしい。
アカメはやや季節外れの取材で、止む無い事情もあったらしいのだが
ムツゴロウに関しては、執拗にトライしたにも関わらず釣れなかったらしい。

本編には書かれていない実際のやりとりが沢山記されていて
本当に、なんとかして釣ろうとしたんだろうなという気持ちがひしひしと伝わってきた。
同じフィールドに立った釣り人としての想いを共感できた。

幼い頃、単なる釣り漫画と思って読んでいた釣りキチ三平を、
この歳になって読んでみると、魚紳さんや一平じいちゃんのひとことひとことに
大人目線の釣り人として改めて関心することが多々ある。


さて、もう一回ムツゴロウ釣りたいかっていうと
とりあえず釣ったし、足のこともあるので、まーいーやって感じ。

でも、釣りキチ三平に出てくるような、これまで釣ったこと無い魚釣ったら、
また何か釣り人としての新たな発見が有るかも知れない。

矢口さんのオフィシャルサイト
https://www.yaguchitakao.com/